No.1_ミュンヘンのビールにしばし禁酒解く_稲畑汀子

★富士桜高原麦酒/メルツェン2020/アルコール度数6%


「ミュンヘン」とあるのでドイツのビールであることは間違いないだろう。

ただ、ドイツビールと言っても結構な数のスタイルがあってスタイルごとに味も香りも色も大きく違う。思いつきにまかせてあげていくと、ヴァイツェン、アルト、ケルシュ、ラガー、ピルス、へレス、エクスポート、デュンケル、ボック、ミュンヒナー、シュヴァルツ、ドルトムンダー、ラオホなどなどなど。


調べたところミュンヘンで作られるスタイルはへレスとデュンケルとミュンヒナー辺りになるよう。バイエルン地方でくくれば、ヴァイツェン、シュヴァルツなんかも加わるか。

ヴァイツェンといえば、バナナのようなフルーティーな香りの全く苦みのないビール。初めて飲んだ時はこれもビールなのかと思ったことを覚えている。


禁酒を解いた人物が普段どのようなスタイルのビールを飲んでいて、どういったビールが好きなのかこの句の中には書かれていない。

けれどもミュンヘンに来たからこそ飲みたいということを考えると、私だったら「メルツェン」を選ぶなと思った。

メルツェンの発祥国はオーストリア。その昔、夏にビールの醸造が禁じられていた頃、夏に飲むためのビールが3月までに仕込まれていて、その時に生み出されたスタイルの一つ。

下面発酵で作られるがアルコール度数は4.8~6.0%とやや高めで、ウィーン麦芽100%のモルティな甘さ、フレッシュな香り、さっぱりした苦みが特徴。赤味がかった褐色で見た目もとっても綺麗なビールである。


オーストリアはドイツじゃない。だけれども、このスタイルのビールはミュンヘンで行われる世界最大のビールのお祭り「オクトーバーフェスト」で飲まれるビールとしても有名なので、ミュンヘンのビールと言ってしまってもいいかなと思った。

この句のビールをメルツェンと仮定すると、急にお祭りの賑わいが聞こえてきて、ミュンヘン中のメルツェンを飲み干す人々が見えてくる。

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