No.2_ 軽くのどうるほすビール欲しきとき_稲畑汀子
★COEDO/Marihana/アルコール度数4.5%
俳句ではビールは夏と決められている。
手元のホトトギス季よせによれば『夏季、もっとも大衆的なアルコール飲料である。生ビール。ビヤガーデン』と記載されている。
俳句に「ビール」としか書かれていなければ、読み手は自動的に夏と解釈するのが一般的だ。もしも、他の季節のビールであることを確実に伝えたい時には「秋のビール」とか「冬のビール」というように丁寧に説明する方が伝わりやすい。
もっともビール自体は一年中売っているから、秋でも冬でも飲みたい人はどの季節にでも飲むだろう。私自身も一年中ビールを飲んでいる。けれど、一年を通してずっと同じスタイルのビールが欲しくなるわけではなく、季節ごとに飲みたいスタイルが少しずつ変わる。大雑把に言えば、寒い季節はアルコール度数が高く重たいスタイルのビールが恋しくなるし、暑いときにはあまりアルコール度数の高すぎないごくごく飲めるスタイルが嬉しい。例えばセッションIPAとか。
「セッション」がどういうスタイルなのかを説明するのは少し難しいのだけど、アルコール度数が低くごくごく飲めるスタイルだとは言えると思う。よく見かけるセッションIPAはIPAから派生したスタイルとなる。一般的にIPAは5.5%から8%くらいまでのアルコール度数が多いが、セッションIPAは5%以下で苦みもマイルドなものが多い。私はセッションと言えばIPAを思い浮かべてしまうけれど、ラガーのセッションを見かけたことがあるので結構幅の広いスタイルなのかもしれない。
この句では「のどうるほす」と書かれているので、のどが渇くような気温の日なのだろう。さらに「軽く」という言葉には、のどの渇きがそれほど深刻ではないことが伺えるうえ、なんとなく軽い日差しや軽い風までもが感じられて、歩いていると薄い汗をかくぐらいの五月の頃を思い浮かべた。
ビールを欲している人がどんな時間帯にいるのかは説明がないのでわからない。だからこれは私の勝手な想像だけど、今日の予定の一つがさっき片付いて、あともう少しだけ予定が残っている、そんな感じの時間帯、具体的には午後三時頃かなと思った。そしてその時間ならもう開いているビアパブもある。
次の予定を思えば酔ってしまうわけにはいかない。だけど、ひとつ何かが片付けば、のどをうるほすぐらいはしたいなと思う。そんな時には、さくっと軽くセッションIPAがちょうど良い。鮮烈なホップの香りは初夏の緑にも通じる。
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